PNP思考のススメ

新年、おめでとうございます。

皆さまにとって、昨年はどんな一年だったでしょうか?

「良かった」「あまり良くなかった」など悲喜こもごもさまざまな気持ちを思い抱き、「今年は良い年になりますように」と神前で拍手しているでは、と思います。

精神科治療において薬物療法は大切な道具のひとつではありますが、それ以上に大切なことは患者自身のやる気を引き出すこと。ちまたではcomplianceの意味でadherenceという言葉が頻用されていますが、アドヒアランスとカタカナ英語のまま普及しているから、本来の意味を誤用されているように思えます。なので私は最近、adherenceを「疾病克服心」と意訳して講演で話すようにしています。

脱線しましたね。当然ですが、精神科には「良くない」気持ちで多くの患者さんが相談に訪れます。そのような患者さんからどうしたらやる気を引き出せるか。とても困難な課題ではありますが、私は次のような「考え方」を話すことにより気持ちを整理してあげることがあります。

「良い」「悪い」は「好き」「嫌い」と同じ感情のひとつであり、その時の、その個人の思いであり、永遠のものではない。時、場所、人が変われば、「良い」「悪い」といった感情は変化するものである。

この世に存在することやもの、すなわち森羅万象には「良い」も「悪い」もなく、ただそこに「ある」というだけの意味でしかない。

「良い」と思ったら、「悪い」と思うところはないか。「悪い」と思ったら、「良い」と思うところはないか。ものとことを冷静に見つめよう。

最後に、「悪い」気持ちを抱いたものやことから、「何を知ることができたか」「何を学ぶことができたか」を明らかにし、「前向き」な気持ちでその経験を将来に活かそう。できれば感謝の気持ちで終えたい。

「陽」「陰」、そして「陽」の流れで気持ちと思考を整理することから、私は「PNP思考」(Positive Negative & Positive thinking)と密かに命名しています(実はこの順序も大切)。

もちろん、理想通りに患者さんがこの考えをすぐに理解するわけではありません。ですが、上に述べたようなしなやかな「考え方」は健やかな生活を送るための素晴らしい手段であると自負しています。

私事ですが、昨年2月15日、合同会社MIRAIを立ち上げました。この会社では、精神科医師、あるいは精神科病院における経営企画管理業務の経験を活かし、訪問型コンサルテーションを展開しています。

たとえばメンタルヘルス相談事業。会社におけるパワハラをきっかけに10年以上に渡って仕事についていない男性に対する母からの相談。ご自宅へと訪問し、年金受給の仕方や本人の課題、今後のあり方について話しました。

メンタルヘルスを不得手とする産業医に代わって、精神科的課題を抱えている職員の病休や復職について助言をすることもあります。

経営企画コンサルテーション事業としては、現在、勤務している病院において、マーケティングの考えを取り入れた「顧客管理システム」の構築や、医療従事者に対して経営マインドを浸透させるべく経営企画セミナーの開催など行いました(ex. 「SWOT分析のpros and cons」「あなたの売りたいものに顧客は興味ない!」「誰も知らない売上と費用の本当の意味」など)。

最後にとりあげるのは、研修講演事業。医師、看護師、薬剤師など医療従事者に対する講演が多くですが、精神科患者さんのご家族や、少しずつですが社員への研修講義も行うようになりました(ex. 「感動を呼ぶ医療をしよう!」「地域で暮らす統合失調症患者さんに快適な処方(CASC)」「統合失調症治療における『最適化』の実践」など)。

勤務医の傍ら、経営している事業ですから、本業が疎かにならないようにぼちぼちとやっていますが、この事業を通じてさまざまな方々とお会いすることは、この上もない愉しみであり、とてもいい刺激となっています。

とっても長い新年の挨拶となりましたが、最後までお付き合い下さり有難うございました。

皆さんにとって、「今年も」とっても素晴らしい年でありますように、心よりお祈りし、キーから指を下ろしたいと思います。

平成31年元旦

 

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